昨年12月に国税庁より「2023年度の相続税の調査状況」が公表されました。
その概要をまとめました。
調査対象は、「2022年以前に発生した相続を中心に、
国税局及び税務署で収集した資料情報を基に、
申告額が過少であると想定されるものや、
申告義務があるにも関わらず無申告となっていることが想定されるものなど」
に対してであり、 2023事務年度(2023年7月から2024年6月までの間)に
実施した実地調査の状況が発表されました。
一般的に、亡くなってから10か月以内に相続税の申告をしますが、
税務調査はその1~2年後に行われるケースが多いと思います。
申告漏れが指摘されるケースは、毎年高く、約85%です。
申告漏れの相続財産は、 現金・預金が圧倒的に多く約30%、
次に有価証券で約11%。 現金預金と有価証券を合わせて、
申告漏れ財産のおよそ40%を占めています。
つまり、本人名義の預金だけでなく、他人名義預金も含めて
申告漏れを指摘されるケースが多い ということで、
亡くなってから調査実施までの期間 (2年から3年)に
税務当局は完全に情報を把握していることを示しています。
実地調査件数としては、2023事務年度が8,556件、
前年の2022事務年度が8196件と約5%増加しました。
非違割合(修正申告割合)は、2023事務年度が84.2%、
2022事務年度が85.8%と依然として高い割合となっております。
つまり、効率的に調査対象を抽出して税務調査を実施していることが分かります。
また、海外資産について計上漏れ財産の地域別内訳が開示されています。
中でも特に北米地域とアジア地域の計上漏れが多く合わせて80%超となっています。
CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)や
租税条約等に基づく情報交換制度を効果的に活用して、
海外取引を積極的に把握していることが分かります。
また、海外資産の計上漏れで多い資産は、やはり有価証券と預金で合わせて約50%超を占めています。
これは、国税庁・国税局からの明確なメッセージで、
今後とも国外財産・国外取引と無申告納税者は重要な調査対象となることは間違いなく、
安易な対応はできないことを物語っています。
また、調査方法の特徴として、簡易な接触による方法が増加しており、
その追徴税額も増加しております。
前年度比で接触件数は約30%増加し、課税価格、追徴税額も約40%増加しております。
具体的には、文書、電話による連絡や税務署への来署依頼による面接による方法で、
効果的、効率的に実施されています。
「税務署からのお尋ね」は確かに効果あり、その通知書から当事務所への申告相談、
申告依頼も確かに増加しております。
「国税庁からの発表サイト」はこちら
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/sozoku_chosa/index.htm
2025-1-15 Tenjin3